2005年5月26日からNHK放送技術研究所の一般公開が始まった。その中で,ひときわ大きなパネルを使って展示していたのが「NHK放送技術研究所『75のお約束』」である(図1)。2008年における研究開発成果の目標がズラリと並んでいた。展示場所は受付のすぐそば。展示パネルの大きさや場所,内容は,同研究所の気迫を感じさせるものだった。
NHK放送技術研究所がこうした公約を示すのは初めて。踏み切った狙いは2つあるという。1つは,同研究所の創設75周年に合わせてインパクトあるメッセージを打ち出すこと。もう1つは,受信料の不払いが増加した中で,一般の視聴者に研究開発活動を理解してもらうことである。「今後の研究開発ビジョン『NEXT』を発表したばかりだが,ビジョンだけでは具体的な活動が見えにくい」(同研究所)。
展示パネルのそばでは,公約と簡単な説明文を書いた資料を配布していた。その内容を各研究開発担当部長ごとに1個,ランダムに紹介する。表現は一部簡略化した。
<ネットワークシステム部長> 6□デジタル放送受信機と携帯端末で総合的に利用可能な権利保護技術 現在検討中のサーバ型放送用CASを拡張する。 <無線伝送方式部長> 16□シングル・キャリア方式による超小型非圧縮ハイビジョン無線伝送装置 導波管部品を使用せず,高周波部品のMMIC化やアンテナとの一体化をする。 <テレビ方式部長> 26□スーパーハイビジョン映像を高画質でコマ数変換する技術 60コマ/秒で走査線が4000本級のスーパーハイビジョン映像を,なめらかさや解像感を保ちながら20コマ/秒,2000本級のデジタル・シネマ映像に変換する。 <音響情報部長> 33□フレキシブル・ディスプレイに向けた薄型で高品質なスピーカを試作 携帯端末やフレキシブル・ディスプレイで必要になるスピーカの薄型化,高音質化を果たす。 <知能情報処理部長> 47□端末の大きさや解像度に応じて適応的に映像をトリミングする技術 携帯型テレビのように解像度の低くく小さな画面でもハイビジョン番組を楽しめるように,コンテンツやユーザーの嗜好に応じて映像を切り出す。 <人間情報科学部長> 52□将来の触覚テレビを目指した触覚提示技術 地図やグラフに触れて理解できる高精細な触覚ディスプレイなどによって視覚障害者や健常者がともに楽しめるようにする。 <放送デバイス部長> 58□可視光全域で光電変換効率100%と増倍率2000倍を実現するHARP膜 長波長光における光電変換効率を高めるとともに,アバランシェ増倍層の厚さを50μmにする。 <材料基盤技術部長> 67□500Gバイトのホログラム記録に必要な多重化技術 ホログラム記録媒体や記録再生光学系の試作に加えて,ホログラム記録システムの容量を500Gバイトに高めるため多重化度を300にする。 |